高血圧

高血圧

高血圧について

高血圧とは?

「血圧」が示すこととは?

血圧とは、心臓から送り出された血液が全身に流れる際、動脈の血管壁の内側にかかる圧力を示しています。

心臓が収縮して全身に血液を送り出した際の血圧を「上の血圧(収縮期血圧)」、
心臓が拡張して血液が心臓に戻る際の血圧を「下の血圧(拡張期血圧)」と呼びます。

「高血圧」と診断される数値は?

高血圧は、下記に当てはまる場合に診断されます。

  • 収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上の場合
  • 収縮期血圧及び拡張期血圧の両方を満たす場合
日本を含めた世界各国のガイドラインで共通して示されている数値
日本国内における高血圧人口は増加の一途?

2016年に国内で行われた国民健康・栄養調査によると、高血圧と診断される人口は40-74才の男性で60%、女性で41%存在しているとされており、75才以上になると男性で74%、女性で77%を占めるとされています。
当調査結果から、日本での高血圧の患者数は4,300万人におよぶとされています。
しかし、驚くことにこの内1,400万人もの方が高血圧を認識しておらず、これらの方を含めて血圧の管理不足とされている方が3,100万人いるとされています。
これらの患者数は国内の高齢化により今後より一層増加することが見込まれています。

主な原因は?

加齢

高血圧は、加齢に伴って有病率が上昇していることが知られています。
下記加齢以外の生活習慣や二次的な要因との複合要因となりますが、加齢も血圧上昇の原因となると考えられています。

生活習慣(食事や喫煙習慣など)

日本人は食塩摂取量が多いとされており、1日あたりの食塩摂取量は9.9g (男性 10.8g、女性 9.2g)であるとされています。
食塩摂取が増えると血圧が上昇することは、今までの観察研究でも報告されています。※1 その他、高血圧の患者様の中には「メタボリックシンドローム」と言われるような肥満の患者様も多く含まれています。
体格が大きくなると体のすみずみまで血液を行き渡らせるために強い圧力で血液を送り出す必要があるため、血圧は自然と上昇します。また、内臓肥満型になると、交感神経が亢進したり、肥満細胞からの分泌物質により血圧が上昇してしまいます。
さらに、喫煙する場合は、喫煙後15~30分程度は血圧が上昇するとされているので、禁煙の必要性が重要と考えられています。
もちろん、睡眠時間や精神心理状態でも血圧は変化するため、治療には特定の一つの習慣だけではなく、生活習慣全般の見直しも必要となります。

参考文献:
INTERSALT Cooperative Research Group. BMJ. 1988; 297:319-328. PMID 3416162

病気に伴う二次的な要因

上記の原因以外に、一般的に「二次性高血圧症」と呼ばれるホルモンの異常により血圧が上昇する場合があります。
このような患者様は高血圧症の患者様全体の10%以上を占めるとされています。また、二次性高血圧の患者様は、治療方針が通常の高血圧症 (本態性高血圧症) とは異なる場合があるため、血圧の治療を始める前にホルモン異常が無いかを確認いただくことをお勧めしています。

主な症状は?

近年、健康診断や人間ドックを受けられる方が増加傾向にあり、高血圧症で来院される患者様は、健康診断時に指摘される場合が多くなっています。
患者様自身に特有の自覚症状がある場合は、病院を受診されると思いますが、高血圧症自体には特有の症状がほとんどありません。
むしろ無症状の場合がほとんどなのです。
そのため、普段の生活の中で習慣的に血圧を測定し、血圧の数値が他の日とは異なり上昇している場合は、症状がなくても当クリニックを受診いただくことをお勧めします。

高血圧による合併症の危険に晒される臓器?!

血管(動脈硬化や大動脈瘤など)
血圧が常に高い状態が続くことにより動脈の血管壁はストレスによって厚く、硬くなります。
これが動脈硬化の病態であり、さまざまな臓器の血流に影響を及ぼします。
心臓(狭心症や心筋梗塞など)
心臓そのものを栄養する血管(冠動脈)が狭窄したり詰まったりすることがあります。非常に強い胸の痛みが起こり、治療が遅れれば死に至る危険性が非常に高くなります。
脳(脳卒中など)
脳の血管が詰まったり出血したりすることがあります。死に直結することもあれば、重篤な後遺症を残すこともあります。
腎(腎硬化症や慢性腎臓病など)
腎臓の血管や腎臓そのものにストレスがかかり、腎臓の機能が低下することがあります。
治療をせずに放置することで、腎不全に至ることがあります。
眼(眼底出血など)
眼の毛細血管が詰まったり出血したりすることがあります。失明に至ることがあります。

高血圧の診断や検査

高血圧の診断基準

ガイドラインにおける診断基準

高血圧の診断基準は、診察室で測定される血圧が140/90mmHg以上、となります。

正常血圧は120/80mmHg未満とされています。

診察室での診断を行う場合は、降圧薬を内服していない状態で少なくとも2回以上(1~2分間隔)の測定により判断します。
通常1回目の血圧は高値となっていることが多いため、各測定値の差が概ね5mmHg未満となった2回の平均値で診断するとされています。

ご自宅での判断基準

ご自宅で計測される場合の判断基準は、135/85mmHg以上、となります。

全世界共通のガイドラインに準ずる

どのような検査が必要になりますか?

血圧測定

ここではご自宅で血圧を計測する場合の条件について説明します。
まず、血圧計に関しては手首で測定できる血圧計も販売されていますが、正確性が劣るとされているため、上腕(二の腕)で測定する血圧計をお勧めしています。
さらに、実際に測定する前に喫煙やカフェイン摂取をせず、会話をしない状況で背もたれのついた椅子に足を組まずに1~2分安静に座った後に測定することが良いとされています。

採血 ・採尿・心電図・レントゲン

高血圧の検査は臓器障害の有無と脳心臓血管へのリスク評価、そして二次性高血圧の鑑別のために必要となります。
まず臓器障害の確認には、採血や採尿の検査が必要となるため、初診時に健康診断結果など直近の検査結果をお持ちでない方や、必要な項目の測定が行われていない方には検査をさせていただいております。
また、二次性高血圧症を疑う患者様には、この採血でホルモンの測定項目も追加させていただいております。
心電図検査では、左室肥大がないかや虚血性心疾患の疑いがないかの判断をし、レントゲン検査においても心拡大の有無や、大動脈の拡張/石灰化などを確認することができるので、高血圧の治療に必要な検査となっています。

高血圧の治療

どのような治療を行うのですか?

生活習慣の改善

生活習慣の改善は、それだけでも降圧効果がみられますが、高血圧の予防の観点からも重要と位置付けられています。
高血圧の患者様は下記の項目を守っていただく必要があります。

食事
塩分摂取量は、1日6g未満とされています。
日本国内における一人当たりの1日摂取量が10g程度と考えると、塩分摂取量を約半分にする必要があります。
1日の塩分摂取量は、個々の身長や体重の確認は必要となりますが一般的な尿検査から確認いただくことが可能です。
また、野菜や果物を積極的に摂取することも必要となります。ただし、カリウム制限の必要な患者様(腎機能障害のある方など)には推奨されていません。
運動
有酸素運動を1日30分以上、週に180分以上行うことが勧められています。
運動療法は収縮機血圧で5mmHg程度の降圧効果があるとされています。
さらに、運動を行うことは、適正体重の維持、インスリン感受性改善、骨格筋量の維持、認知症の予防にも繋がることが報告されています。
なお、適正体重とはBMI(体重kg/身長m/身長m)値を示しており、25未満の値を示しています。
飲酒・喫煙
節酒も必要です。
男性ではエタノール換算で1日20~30ml以下、女性では1日10~20ml以下の制限が必要です。
また、喫煙が脳心臓血管疾患のリスクとなることが知られており、血圧上昇作用もあるため、禁煙は必要となります。
睡眠
睡眠障害は、交感神経系や視床下部ー下垂体ー副腎系の活性化を進めるため血圧上昇に作用するとされています。
また、中等度以上の睡眠時無呼吸症候群による血圧上昇は特に男性で認められているため、疑わしい場合は検査が必要となります。
薬物治療

生活習慣の改善で血圧の改善が見られない場合、飲み薬による薬物治療が必要となります。適切なお薬の選択には、採血・採尿・心電図・レントゲンなどの検査結果を総合的に判断する必要があります。

その他

二次性高血圧である場合、単純に血圧を下げるのではなく、血圧が上昇する原因となる病気を治療する必要があります。
二次性高血圧症のうち、代表的な疾患は原発性アルドステロン症です。
本疾患は、副腎からアルドステロンというホルモンが自律的に分泌される疾患です。
治療においては、病変が片側性か両側性かで異なり、片側性の場合は腹腔鏡下副腎摘出術が第一選択となります。
手術が難しい場合や両側性の場合は内服治療となりますが、この場合ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬と呼ばれる種類の降圧薬を内服する必要があります。

改善に向けたお薬は?

お薬の種類や効果と副作用

血圧を下げるお薬は降圧薬(コウアツヤク)と呼ばれます。
降圧薬は複数の種類があり、大きく分けて下記4種類となります。

Ca拮抗薬

ACE阻害薬 / ARB

利尿薬

βブロッカー

それぞれのお薬において推奨される病態や使用を避けるべき条件が異なるため、患者様の状態に合わせて処方が決まります。

お薬の特徴
Ca拮抗薬
Ca拮抗薬は、血管を広げることにより血圧を下げ、狭心症の発作を抑える効果があり、細胞膜のCaチャネルに結合して細胞内へのCaイオンの流入を阻害するお薬です。
不活性化速度の遅いとされるL型Ca拮抗薬は長時間作用するものが主流となっており、特にアムロジピンは効果発現が遅く、作用時間が長いという特徴があり頻用されています。
ACE阻害薬 / ARB
ACE阻害薬は、体内の血圧を上げる物質(アンジオテンシンII)の生成を抑えることで、収縮作用や交感神経活性の抑制により降圧効果をもたらすお薬です。
ARBは臓器保護作用があるとされているので、心臓や腎臓、脳の合併症がある患者様の第一選択薬として使用されています。
また、比較的副作用の少ないお薬としても知られていますが、腎機能の悪化している患者様には高カリウム血症のリスク管理が必要となります。
利尿薬
利尿薬は、塩分摂取量が多いことによる体液貯留が高血圧の原因として考えられる場合の治療として用いられます。
しかし、電解質異常や腎機能の悪化、代謝系への影響もありうるため使用に際しては採血などでのチェックが必要となります。
βブロッカー
心臓のβ1受容体を遮断することで、心拍数を減少させたり、心収縮力を抑えたり、交感神経活性を抑えることで、心臓からの血液の拍出量を減少させる作用のあるお薬です。
そのため、心筋梗塞後や甲状腺機能亢進症などの高心拍出量を伴う場合に積極的に使用されますが、逆に心臓の伝導障害があったり冠攣縮性狭心症のある方には使用することができない薬剤となるため、選択肢としての判断には医師による診断に基づく必要があります。

イオン葛西クリニックの治療方針

イオン葛西クリニックにおける高血圧の治療方針

イオン葛西クリニックでは、患者様が安心して治療を受けられるよう、患者様の症状に合わせた適切なご説明とフォローアップを行い、副作用の監視にも細心の注意を払った上で、患者様の環境や状況に合わせて適切な治療薬を提案させていただきます。

生活指導

健康診断などで高血圧が指摘された場合、基本的には即座にお薬が処方されることはありません。
まずは患者様の生活習慣をお伺いさせていただき、改善の余地がありそうなポイントをお伝えできるようにしていきます。理想的な生活習慣としては前述した通りですが、実際の生活に全てを落とし込むのは難しいため、患者様個々の生活習慣に合わせて、どこを重点的に改善すべきかを一緒に話し合い、改善に向けてアドバイス、検討していきます。

薬物療法

Ca拮抗薬、ARB、利尿薬を中心とした治療方針を設けています。
これらの薬剤は合併症が比較的少なく、飲み合わせの悪いお薬も少ないため、高血圧治療の導入に適しています。
1種類の薬剤から開始し、血圧の推移を確認し、必要に応じて増量もしくは他の種類の薬剤を組み合わせていきます。
1種類での改善が見られない場合でも複数種類を組み合わせることにより改善を得ることができます。
複数種類のメカニズムの異なる薬剤を用いる場合、これらを一剤にまとめた合剤も積極的に使用しています。
内服する種類と数が減り、負担なく継続いただくことができます。

紹介基準

採血で著しい腎機能障害がみられる場合、脳心血管疾患の疑いが高い場合、若年発症で改善が見られない場合、二次性高血圧が疑われる場合などは更に精査の必要があるため、連携する専門病院への紹介を行います。

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