溶連菌感染症

溶連菌感染症

溶連菌感染症とは

溶連菌感染症とは

溶連菌感染症(溶血性レンサ球菌感染症)はβ溶血性レンサ球菌という細菌による感染症です。
細菌の種類や感染部位によって症状が違い、軽度な場合が多いですが重症になることも少なくありません。
小児では咽頭炎がよくみられ、ご家族や学校などで集団感染することもあります。
出産時に妊婦が溶連菌に感染していると、新生児が重篤な感染症を引き起こすことがあり、予防が大切です。

溶連菌感染症のうち最もよくみられる溶連菌性咽頭炎は、発熱や喉の痛みなど、風邪と症状がよく似ています。かぜと思って放置すると2〜3週間後に合併症を引き起こすことがあるため、少しでも疑った場合は医師へご相談ください。抗生物質の適切な服用で合併症を防ぐことができます。

溶連菌感染症の原因

溶連菌(溶血性レンサ球菌)は溶血の仕方でα、β、γの3種類に分けられます。
そのうち溶連菌感染症の原因に含まれるのはβ溶血性レンサ球菌です。
β溶血性レンサ球菌はA・B・C・G群に分類され、次の特徴があります。

A群β溶血性レンサ球菌

菌種はストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)であり、日本では化膿レンサ球菌と呼ばれます。β溶血性レンサ球菌のうちA群の感染症が90%以上を占め、感染部位によってさまざまな症状を引き起こします。
感染経路は咳やくしゃみなどの飛沫感染や手指を介した接触感染です。

B群β溶血性レンサ球菌(GBS)

菌種はストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)であり、日本ではGBS(Group B streptococcus)と呼ばれることが多いです。妊婦の方が感染していた場合、出産時に新生児に感染して髄膜炎や敗血症など重篤な症状を引き起こします。
感染経路は出産時の産道感染や、母親の膣や腸にいるGBSの手指を介した接触感染が挙げられます。

C群およびG群β溶血性レンサ球菌

主な菌種はストレプトコッカス・ディスガラクティエ(Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilis)です。ヒトの皮膚などに常在しており、主に化膿性の症状を引き起こします。
感染経路はよくわかっていませんが、常在している菌が何らかの方法で血中に入り込み感染すると言われています。

溶連菌感染症の症状

溶連菌感染症の症状は溶連菌の群の違いやその感染部位によって、主に次のように異なります。

A群β溶血性レンサ球菌
溶連菌性咽頭炎
学童期の小児に最も多く発症します。感染してから2〜5日で突然の発熱とだるさ、喉の痛みが出現して、しばしば嘔吐を伴います。かぜに症状が似ていますが、咳や鼻づまりなどはみられません。
猩紅熱
溶連菌性咽頭炎に続いて発症するのが一般的です。日焼けのように赤く、小さな発疹が全身に広がり、イチゴ舌という赤い特徴的な舌がみられます。
膿痂疹(とびひ)
溶連菌によるとびひは、小児より成人によくみられます。感染部位の周辺や離れた部位にかさぶたが広がるのが特徴的です。
丹毒・蜂窩織炎
丹毒や蜂窩織炎は皮膚から皮下脂肪にかけての感染症で、蜂窩織炎は丹毒よりも深くまで感染します。丹毒は顔が、蜂窩織炎は膝から下が赤く腫れて、熱感や痛みを伴うことが多いです。
壊死性筋膜炎
溶連菌による壊死性筋膜炎は蜂窩織炎よりも深く、筋肉まで侵される重篤な感染症です。見た目には異常がほとんどなくても強い痛みが出現し、急速に皮膚症状が広がってショックに陥ることが多いです。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)
突発的に発症し、敗血症などの重篤な症状を引き起こす感染症です。死亡率は約30%と言われていますが、重症化の理由はわかっていません。蜂窩織炎や壊死性筋膜炎から続いて起こることもあります。
B群β溶血性レンサ球菌(GBS)

GBSは一般的に病原性が弱く、新生児以外に感染症を起こすのは稀です。
新生児には3種類の発症形式があります。

  • 子宮内ですでに感染
  • 分娩時に産道感染し、生後1週間までに発症
  • 生後1週間以後にゆっくりと発症

前2つの形式では、急速に敗血症や髄膜炎などが進行して命の危険をともないます。
後遺症を残すことも少なくありません。

C群およびG群β溶血性レンサ球菌

80代に最も多く発症すると言われています。蜂窩織炎や化膿性関節炎などの化膿性疾患を発症することが多いです。敗血症を発症することもあります。

溶連菌感染症の合併症

溶連菌感染症の合併症は中耳炎や肺炎、髄膜炎など多岐にわたります。
その中でもよく知られているのは、感染から2~3週間後に発症するリウマチ熱と急性糸球体腎炎です。

リウマチ熱

溶連菌性咽頭炎などの発症後、免疫反応によって関節や皮膚、心臓に炎症が起こる、小児に多い疾患です。近年は抗菌薬治療が普及して減少し、年間数例程度になりました。

急性糸球体腎炎

溶連菌性咽頭炎などの発症後に顔や足のむくみ、血尿が出現する疾患です。小児~若年者に多くみられます。腎機能などの症状は自然とよくなるため、安静にして塩分・水分制限で対応します。

溶連菌感染症の検査

溶連菌感染症の検査

溶連菌感染症を診断するために、次の検査を用いて溶連菌の存在を確認します。

迅速診断キットによる検査

喉の感染が疑われたとき、最もよく用いられる検査です。綿棒で喉の奥の粘膜を採取して、約15分で結果がわかります。比較的精度は高いですが偽陰性(感染していても陰性となる)ことがあるため、症状から疑われる場合などは培養検査を行います。

培養検査

感染部位からサンプルを採取し、培養を行います。喉に限らずさまざまな部位での感染に対応でき、薬剤の感受性も調べられます。精度は高いものの結果が出るまでに数日ほど時間が必要です。

血液検査

リウマチ熱や急性糸球体腎炎の合併症を疑うとき、喉症状は治っていることが多く、迅速診断の結果が参考にならなくなります。その場合は血液検査で溶連菌の抗体を調べることで診断が可能です。GBSの感染が疑われた場合も血液検査を行います。

溶連菌感染症のお薬

溶連菌感染症のお薬

溶連菌感染症では抗生物質の服用が必要です。基本的には「アモキシシリン」などペニシリン系の抗生物質を10日間服用します。ほかにもセフェム系の抗生物質を5日間服用する方法もあります。
お薬によるアレルギーがある患者様には「エリスロマイシン」などマクロライド系抗生物質を処方します。

溶連菌性咽頭炎の場合、抗生物質の服用開始から2〜3日経つと、熱が下がって喉の痛みが改善することが多いです。しかし数日では体内に細菌が残っている場合が多く、心臓や腎臓の合併症を予防するためには抗生物質を最後まで飲み切る必要があります。

妊婦健診でGBSの感染が疑われた場合は、適切な時期に抗生物質を服用することで新生児への感染を予防できます。

イオン葛西クリニックの治療方針

イオン葛西クリニックにおける溶連菌感染症の治療方針

当クリニックでは発熱や喉の痛み、発疹などの症状がある場合、問診や視診、聴診、触診をさせていただきます。家庭内や学校や職場などで流行していれば、問診で疑うことは容易ですが、周囲で感染を認めなくてもどこで菌をもらっているかはわかりません。詳細な問診と丁寧な身体診察で対応させていただきます。

溶連菌の感染が疑われる場合、迅速診断キットによる検査や培養検査を行います。
検査で陽性反応が出た場合は、抗生物質を服用していただきます。抗生物質開始後は数日で症状が軽快しますが、内服を途中で中止することなく処方された日数を最後まで飲みきることが重要です。
また、迅速検査が陰性であっても、咽頭所見をはじめとする臨床症状で溶連菌を強く疑う場合、ご家族など近しい方が感染している場合には、臨床診断で溶連菌感染と判断し抗生物質を処方することもあります。
解熱薬など症状を和らげるお薬も必要に応じて処方いたします。
内服開始後に症状が改善すれば経過をみていただいても問題ありませんが、合併症の急性糸球体腎炎を発症していないか検査するために、治療開始から3-4週間後を目安に受診いただき、尿検査で血尿や蛋白尿がないかを確認することを推奨しております。この時期を待たずとも、治療開始後に肉眼的な血尿やむくみなどが出現した場合は再度受診ください。

溶連菌感染はクリニックで治療が可能な病気ではありますが、症状の程度から急を要すると判断した場合や、重症もしくは合併疾患から重症化のリスクが高いと判断した場合には、提携の専門病院に紹介させていただきます。

内科の一覧に戻る