機能性ディスペプシア

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機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアとは

機能性ディスペプシアとは

機能性ディスペプシアは、検査で明らかな病変や異常が見られないにもかかわらず、慢性的な胃もたれや胃痛などの上腹部症状が現れる病気です。
以前は「胃下垂」や「神経性胃炎」などと呼ばれていました。「機能性」は形態的な異常がない状態を指し、「ディスペプシア」はギリシャ語で「消化不良」を意味します。

以下の3つの特徴に当てはまると、機能性ディスペプシアが疑われます。

  • 慢性的である
  • 胃もたれや胃痛など胃や十二指腸に由来する症状がある
  • 症状の原因となりうる異常が確認できない

慢性的な腹部の痛みの原因は、胃や十二指腸の潰瘍やがん、炎症であることが一般的です。しかし、病変がなく症状が現れることが、機能性ディスペプシアの特徴です。

暴飲暴食などの明確な原因がなくても、症状が持続するため、患者様の生活の質(QOL)に大きな影響を与えることがあります。

機能性ディスペプシアの原因

機能性ディスペプシアの原因は、はっきり解明されていません。いくつかの要因が重なって発症するといわれています。

機能性ディスペプシアの原因と考えられているのは、たとえば以下の通りです。

  • 胃・十二指腸の運動異常や知覚過敏
  • 胃酸の過剰分泌と酸感受性の亢進
  • 知覚過敏
  • 消化管運動異常
  • ピロリ菌などの感染
  • 遺伝や体質

上記のような、胃の機能が低下している状態に、暴飲暴食でさらに胃に負担がかかると、症状は悪化します。
無視できないのは、ストレスのような精神的要因です。ストレスがかかると、自律神経がバランスを崩します。胃の働きは自律神経にコントロールされていることから、胃の機能も低下するのです。加えて、ストレスによる不眠や過食で、さらに胃に負担がかかります。
複数の原因が単独または複合的に関与し、胃や十二指腸の正常な機能を妨げ、症状を引き起こすと考えられています。

機能性ディスペプシアの症状

機能性ディスペプシアの症状には、みぞおち辺りの痛み、胃もたれ、早期飽満感(少し食べるだけで満腹になる)、灼熱感などがあり、大きく分けて以下の2種類に分類されます。

  • 食後愁訴症候群(食後の胃もたれや早期飽満感)
  • 心窩部痛症候群(みぞおちの痛みや灼熱感)

ただし、症状は重複することもあります。

前日の暴飲暴食など、明確な理由がないにも関わらず、上記の症状が慢性的に続くことが、機能性ディスペプシアの特徴です。
特定の原因が思い当たらず、検査しても病変が見られないため、気のせいだとやり過ごす方もいます。しかし、症状が続く、もしくは頻繁に起こる場合は、機能性ディスペプシアが発症している可能性があります。放っておくと生活の質を低下させることにもなりかねません。

機能性ディスペプシアの検査

機能性ディスペプシアの検査

まずは、症状を確認するために以下のような詳細な問診を行います。

  • 症状
  • 発症時期
  • 発症頻度
  • 食生活
  • 体重の増減

必要に応じて腹部CT、超音波検査を実施することもあります。
胃痛や胃もたれの症状があり、胃潰瘍や胃がんなどの病気が見当たらない場合に、機能性ディスペプシアと診断されるのです。
症状が改善しない場合には、胃排出機能検査やドリンクテストなどの特殊検査が行われることもあります。

機能性ディスペプシアの治療

機能性ディスペプシアのお薬

機能性ディスペプシアの治療には、症状に応じたお薬が使用されます。
主に、胃酸分泌を抑える酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬やヒスタミンH2受容体拮抗薬)や、胃の運動を改善する消化管運動機能改善薬(ドパミンD2受容体拮抗薬、コリンエステラーゼ阻害薬など)が用いられます。
また、精神的な要因が関与している場合には抗不安薬や抗うつ薬での対処も可能です。

漢方薬(六君子湯など)やピロリ菌の除去療法も一部の患者には有効です。
機能性ディスペプシアの薬物療法に関しては、効果の程度に個人差があり、症状が完璧に改善するとは限りません。

医師と伴走しながらさまざまな原因に対処する薬を試したり、併用しながら様子を見ていくことになります。

機能性ディスペプシアの治療方法

機能性ディスペプシアの治療は、原因に合わせて行います。
機能性ディスペプシアの原因は大きく分けて「胃の運動機能障害、知覚過敏」と「心理社会的要因」の2つです。したがって、治療法もこれらの原因に対応したものになります。

薬物療法

まず、機能性ディスペプシアの症状を和らげるために、以下のような薬剤が処方されます。

酸分泌抑制薬

胃酸の分泌を抑え、胃酸による痛みや胸焼けの症状を軽減します。

  • プロトンポンプ阻害薬(PPI)
  • ヒスタミンH2受容体拮抗薬

そして、病変を確認するために以下のような検査を行います。

  • 胃カメラ
  • ピロリ菌検査
  • 血液検査など
消化管運動改善薬

胃の動きを促進し、胃もたれや早期飽満感の症状を軽減。

  • ドパミンD2受容体拮抗薬
  • コリンエステラーゼ阻害薬

心理的な要因が強い場合には、抗不安薬や抗うつ薬が処方されることもあります。

ステップダウン治療

症状が重く、生活の質(QOL)を著しく低下させている患者様には、最初から複数のお薬を併用する「ステップダウン治療」が行われることがあります。異なる作用のお薬を併用して症状をコントロールし、その後徐々にお薬を減らしていく方法です。

食事・生活指導

機能性ディスペプシアの治療には、薬物療法だけでなく、食事や生活習慣の改善も必要です。脂肪分の多い食事や胃酸の分泌を刺激する食べ物は避けるべきです。
具体的には、揚げ物や生クリーム、コーヒー、アルコール、香辛料、炭酸飲料、冷たいものを避けるよう指導します。
また、食事の際によく噛むことや、食事の回数や量を個々の胃の状態に合わせて調整することなど、食生活に対する指導も行います。

ストレスへの対応

心理社会的要因が機能性ディスペプシアの発症に関与している場合には、心療内科医や精神科医と協働して診療を行います。ストレス管理やカウンセリングなどが症状の改善に役立つでしょう。

ピロリ菌除去

ピロリ菌感染が確認された場合には、除菌療法を行います。

イオン葛西クリニックの治療方針

イオン葛西クリニックにおける機能性ディスペプシアの治療方針

当クリニックでは、まず詳細な問診や身体診察を行い、原因の特定に努めます。問診によって、ご自身では自覚していなかった心理的要因が明確になることもありますので、一見症状とは関係ないことも詳しく聞かせていただきます。

上に述べたように、機能性ディスペプシアでは他の疾患がないことを確認することが重要ですので、必要に応じて胃カメラの検査を行います。当クリニックでは胃カメラが実施できないため、提携の専門病院を紹介受診していただき、器質的疾患がないことを確認します。
胃の機能低下が原因の機能性ディスペプシアを疑った場合は、酸分泌抑制薬や消化管運動改善薬で、胃の機能を補う治療をメインで行います。

一方、ストレスが主な原因と考えられる機能性ディスペプシアの場合は、ストレスへの適切な対処を考えます。内服治療だけでなく、生活環境を変えたり、生活習慣を変えたりすることが治療につながることもあります。必要に応じて市販薬の使用を許可することもあります。

原因が分からずに、やみくもに自己判断でお薬を服用することはお勧めできません。効果が実感できないばかりか、お薬の作用でさらに胃が荒れてしまうことにもなりかねないためです。
「胃もたれが頻繁に起こる」「すぐにお腹いっぱいになり、食べられない」など思い当たる症状があれば、お気軽にご相談ください。

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