尿路結石

尿路結石

尿路結石とは

尿路結石とは

尿路結石とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道といった尿路に石のような固い塊、いわゆる結石が生じる疾患です。生涯に男性では7人に1人、女性では15人に1人が発症し、泌尿器科領域では最もよくみられる疾患の1つと言われています。
発症は中年以降の男性が主ですが、近年は女性や若い男性でも発症することが多いです。突然の強い腹痛に襲われて、しばしば腎盂腎炎という尿路感染症を合併することがあり、放置すると命に関わる危険な疾患です。

尿路結石は結石が生じる場所で名前が異なり、上から順に腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石の4つに分けられます。このうち腎結石と尿管結石は上部尿路結石、膀胱結石と尿道結石は下部尿路結石と呼ばれますが、尿路結石の90%以上が上部尿路結石です。尿路結石は再発しやすく、上部尿路結石である腎結石の再発率は5年で45%、10年で60%にもおよびます。

尿路結石の原因

尿路結石は次のような尿の状態で形成されやすくなると言われています。

  • 結石の成分(シュウ酸やカルシウム、尿酸など)の濃度が上昇する
  • 尿が析出しやすいpHになる
  • 尿の流れが滞る
  • 結石抑制因子が減少する

このような尿の状態になりやすい尿路結石の主な原因を以下に解説します。

お薬・食事

尿酸排泄促進薬やステロイド、アセタゾラミドなどのお薬が原因の1つです。ほかにも、高タンパク食や高プリン体食など、食生活の欧米化も関係しています。

長期間の寝たきり

長期間寝たきりですと骨が溶けて、血中から尿にカルシウムが流れ出します。また、尿が滞りやすくなったり、尿路感染が起きやすくなったりして尿路結石を生じやすくなります。

飲水不足

水分を取らないことで血液や尿が濃縮されて、結石の成分が析出して結石を形成しやすくなります。

尿路通過障害

水腎症や前立腺肥大症、神経因性膀胱など、尿路の通過障害が起きると尿の流れが滞り、結石が生じやすくなります。

尿路感染

大腸菌など一部の細菌が尿をアルカリ化することで、結石の成分の1つであるリン酸マグネシウムアンモニウムが多量に析出して、結石を形成することがあります。特に女性が発症しやすいです。

内分泌・代謝異常

副甲状腺機能亢進症やクッシング症候群、痛風などの内分泌や代謝の異常が起こる疾患も尿路結石を引き起こします。

尿路結石の症状

尿路結石は疝痛という、周期的に起こる激しい腹痛が初期症状として非常に有名です。
多くの方が、これまで感じたことの無い、二度と味わいたくない痛みだと表現します。筋肉痛などは動くと痛いですが、尿路結石ではじっとしていても痛くなるのが特徴的です。
ほかにも血尿がよくみられますが、部位ごとに尿路結石の症状は大きく異なります。以下に解説します。

腎結石

腎結石は基本的に無症状のことが多いです。結石が大きい場合は目視で血尿を確認できることがあります。結石を放置していると尿が蓄積されて腎臓が広がり水腎症になることがあります。感染などをともなって突然高熱になり、腰痛が生じる腎盂腎炎を合併するのも少なくありません。

尿管結石

先ほど説明した疝痛発作は、この尿管結石で非常によくみられます。腎結石の一部が尿と共に流れていき、尿管につまって発症します。痛みの部位は背中や脇腹、下腹部などが多いです。尿管のどの高さでも結石がつまることで尿の水圧が急激に上昇し、尿管を圧迫することで痛みとともに吐き気や嘔吐が生じます。尿管結石も腎結石と同様に、水腎症や腎盂腎炎を合併する可能性が高いです。結石が10mm未満だと膀胱へ移動しやすく、膀胱へ落ちてしまえば痛みも治ります。

膀胱結石

膀胱結石があると、膀胱が刺激されていつも尿が近くなったり、尿が残っている感じがしたりします。膀胱結石は排尿がうまくできずに尿が滞ることで生じやすい結石です。そのため、男性で膀胱結石がある場合は前立腺肥大症や前立腺がんなどの尿道をふさぐ疾患が隠れていないか検査をする必要があります。

尿道結石

膀胱結石と尿道結石は尿路結石の約5%であり、あまりみられませんが、膀胱に落ちた尿管結石などがたまに尿道につまることがあります。この場合尿が全く出なくなることがあり、緊急処置が必要になります。

女性では閉経後に尿路結石を発症しやすく、50〜70歳代でよくみられます。女性は尿路感染や生活習慣の乱れにともない尿路結石を発症しやすいです。生じやすい部位や症状は男性と変わらず、上部尿路結石が90%以上であり、尿管結石では疝痛が特徴的です。

尿路結石の検査

尿路結石の検査

疝痛や血尿などを主訴に来院されて尿路結石が疑われる場合には、以下のような検査を行うのが一般的です。

触診

背中を軽く叩いたりして痛みが無いかを調べます。

尿検査

尿に血が混じっているかを顕微鏡レベルまで調べます。

血液検査

尿路結石による腎機能障害が無いかを調べます。

腹部X線検査

腎臓から膀胱までに結石の有無や位置を調べます。成分によってはレントゲンに写らないことがあります。

超音波検査

超音波を使って結石を調べますが、位置によっては確認できないことがあります。結石そのものが確認できなくても、水腎症を認めれば尿路結石を強く疑います。

腹部CT検査

上記検査で明らかにならず、それでも尿路結石が疑われる場合に行うことがあります。水腎症の有無を確認する検査としても有用です。

尿路結石の治療

尿路結石のお薬

尿路結石では、まず痛みへの対処が重要です。一般的には鎮痛薬のNSAIDsの坐薬が用いられます。効果が不十分な場合は他の鎮痛薬や抗不安薬などを用いることが多いです。妊娠中の患者様にはアセトアミノフェンが用いられます。

尿管結石が10mmを超える場合は手術を行いますが、10mm未満の場合は自然に排出する可能性があるため、飲水を行ったうえで結石が自然に排出されるのを待ちます。ほかに使用するお薬としては、尿管の痙攣をやわらげる鎮痙薬、尿管を広げる排石促進薬などがあります。

六本木クリニックの治療方針

六本木クリニックにおける尿路結石の治療方針

初めて尿路結石を発症した場合、腹痛を主訴に受診される方もいます。腹痛の原因として最も一般的な消化器症状を疑って受診されますが、実は尿路結石による痛みであることも珍しくありません。痛みの部位を詳しく聞いてみると、側腹部から背部の痛みであり、尿路結石を疑うきっかけになります。したがって、まずは痛みの詳細な問診が重要になります。

一方で、尿路結石を経験されたことのある方は、ご自身で尿路結石を疑って受診される方が多いです。一度経験した痛みや感覚と同じ症状であると訴える方がほとんどです。その場合には、最初から尿路結石を疑って診察をします。
背部痛や疝痛があったり、尿路結石の既往があったり、さらには肉眼的な血尿を認めるような場合には尿路結石を積極的に疑い、触診や尿検査、血液検査や画像検査を行います。触診での背部叩打痛や、血液検査や画像検査で異常が指摘できないことも珍しくなく、血尿が確認できれば尿路結石の診断となります。

尿路結石で患者様が一番つらいのは痛みです。それも、日常的に経験する胃腸炎などに伴う腹痛と比較して非常に強い痛みであり、鎮痛薬として高い効果が期待できる座薬を使用することが一般的です。鎮痛薬を使用して一時的に痛みは改善しますが、結石が尿管から膀胱に落ちるまでは痛みを繰り返します。まずはクリニックで座薬を用いて痛みを緩和し、自宅でも使用できるように座薬を処方します。痛みのコントロールができれば、積極的に水分摂取を行いながら結石が尿とともに自然排出されるのを待ちます。結石が排出されずに症状が長時間持続する場合には、結石が大きいなどの理由から排出が期待できない可能性もあるため、提携の専門病院へご紹介させていただきます。

検査で尿の停滞による腎盂腎炎が疑われる場合には抗菌薬を使用します。抗菌薬は症状が改善しても自己中断することなく、処方された分を必ず飲みきってください。
腎盂腎炎は重症化すると、局所の感染から全身の感染へと波及することがあります。その場合には意識が朦朧としたり、血圧が低下したり、呼吸回数が増えるなどの異常が生じます。必要に応じて入院施設を伴う医療機関へ紹介させていただきます。

尿路結石を発症した方の約半数が再発するというデータがあるため、結石が排出された後は、再発予防が非常に大切です。そのため、次のような生活改善を推奨しています。

飲水
食事以外に1日2リットル以上の飲水を行う。
食事
バランスの取れた食事、カルシウムの摂取(シュウ酸が多いタイプの場合)、動物性タンパク質を摂りすぎない、塩分を摂りすぎないなど。
生活
肥満の予防、適度な運動。

特にカルシウムはシュウ酸が多いタイプの尿路結石の場合、一定量摂取することで、尿路結石の予防になることが知られています。
健康的な生活習慣を身につけて、再発予防を心がけましょう。

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