禁煙外来

禁煙外来

禁煙って難しい

禁煙はマラソンのようなもの

喫煙されている多くの方が、タバコによる生活習慣病の発症・増悪や肺がんの発症などの深刻な被害をわかってはいるものの、「禁煙したけどまた吸っちゃった...」という方が多いと思います。マラソンも同じで、一人で走り切れる人は限られており、伴走者がいることでゴールまで辿り着ける方が多く、当クリニックの禁煙治療プログラムにおいても医師や看護師が伴走者となり、一緒に禁煙達成を目指します。

うまくいかないのはなぜ?

背景には身体依存と心理的依存があります。身体依存について、タバコの依存性は大麻や覚醒剤より高いとされ、ニコチンが切れると目が覚める、イライラする、集中力が下がるなど、依存してしまうと離脱症状が生じる可能性があります。また心理的依存については後述する「クセ」のようなものがあり、 習慣による問題が大きいため、環境整備やマインドセットの変更が必要になります。

禁煙を悩んでいる患者様には大きく分けて2つのパターンの方がいらっしゃいます。

  • やめるメリットを感じない方
  • メリットを理解しているけどやめられない方

こちらのページをご覧になっている皆さまは後者であると信じているため、ぜひ適切な知識を身につけていただき、ニコチン依存を改善し、そして禁煙の成功体験を感じていただきたいと思います。

禁煙外来とは?

禁煙外来とは?

もちろん禁煙達成、そして禁煙を維持していただきたいと思っておりますが、はじめから頭ごなしにメリットばかり押し付けられても良い気持ちはしないと思います。そのため初回は禁煙についてのお話しや、患者様のお考えをしっかりと伺い、本当に治療プログラムを開始すべきなのか一緒に考えていきます。

治療において一番大事なことは患者様ご自身の努力になりますが、伴走者として最大限の協力をいたします。
主には禁煙補助剤の使用や専門的なアドバイスを受けていただき、「3ヶ月間のうちの5回通院」していただきます。一般的には成功率は約70〜80%と高い結果を得られています。

禁煙するメリットは?

病気にならない、病気を悪くしない
寿命が10年伸びる可能性
英国の観察研究では喫煙の有無で平均寿命に10年の差を認めました。
死亡リスクを下げる
心筋梗塞、心臓突然死、脳卒中をはじめとして、他にも心房細動、心不全、腹部大動脈瘤のリスクを減らします。どんなお薬やサプリを飲むよりも最もリスクを下げてくれるのが禁煙です。
「がん」を予防する
肺がん、喉頭がん、頭頸部がん、食道がん、胃がん、結腸・直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、腎臓がん、膀胱がん、子宮頸がん、急性骨髄性白血病など12種類のがんのリスクを低下させます。
ほかにも多くの病気の発症を防ぐ
呼吸器疾患(COPD3や間質性肺炎など)、糖尿病、骨粗鬆症、生殖関連(勃起障害や不妊症など)、白内障や加齢黄斑変性、歯周病などの発症リスクを下げます。
ご家族、お子様、友人を守る

タバコの煙には、喫煙者が直接吸い込む「主流煙」と、タバコの先からでている「副流煙」があります。実はフィルターを通していない副流煙の方が有害な物質が多く含まれており、副流煙を吸ってしまうことを「受動喫煙」といいます。またタバコの煙が染み付いたソファーや車などを使用することによる「残留受動喫煙(三次喫煙)」も同様に健康被害に繋がります。

子どもを病気から守る
小児期からの受動喫煙により気管支喘息(ぜんそく)や気管支炎、中耳炎などの発症リスクをあげるほか、妊娠中の受動喫煙は発達遅延、死産、先天奇形などのリスクも高まります。
周囲の皆さまを肺がんにさせない
暴露の強さとリスクとは比例関係にあり、ご家族、職場など暴露時間が長くなりやすいひとほど発症リスクが高まります。また小児期に暴露されることも将来の肺がんリスクを高めてしまいます。
老け顔を防げる

美容面においても大きな影響があり、タバコの煙により体内に活性酸素(フリーラジカル)が生まれてしまい、酸化(≒エイジング)が起きてしまいます。禁煙することでシミやシワができにくくなり、老化の促進を妨げることができます。

当クリニックの禁煙治療プログラム

行動変容における5つのフェーズ

禁煙に限らず、行動を変えてみようとするときには以下の5段階のフェーズがあります。

無関心期(前思考期)

禁煙に対して興味を持てず、または禁煙の必要性を感じていない段階

このホームページをご覧になっていただいてる時点で、このフェーズは抜けていると思います!

意識変容期(思考期)

喫煙するリスクや禁煙のメリットについて考え始めるが、行動に移していない段階

今ご覧になっていただいている方は、ちょうどこのあたりでしょうか。まずはこのページを最後まで読み終えることを目標としてみてください!

準備期

禁煙を具体的に考え、計画を立て始める段階。禁煙補助剤やサポートプログラムについて情報を収集したりすることもある段階

当クリニックに来院されるときはこのフェーズです。お待ちしております!

行動期

実際に禁煙を開始し、補助剤の使用やカウンセリング、行動変容技術を活用する段階

治療プログラム中のフェーズです。お会いするのが楽しみです!

維持期

禁煙行動を継続し、再喫煙のリスクに対処しながら、禁煙を習慣化していく段階

プログラム終了後のフェーズです。禁煙診療以外で当クリニックにお越しいただければ続きのお話をさせていただきたいと思います!

診療の流れ

初回
  • ヒアリング、禁煙意思の確認
  • タバコ依存度スクリーニング(TDS)テスト
  • 呼気一酸化炭素濃度測定
  • 禁煙補助薬の処方
2回目以降
  • ヒアリング、禁煙意思の確認
  • 呼気一酸化炭素濃度測定
  • 禁煙補助薬の処方

お薬の種類

特徴

主な特徴は以下の通りです。

薬剤名メリットデメリット
ニコチン
パッチ
持続時間が長い、市販あり毎日張り替える必要あり
ニコチンガム即効性がある、市販あり保険適用外
バレニクリン禁煙成功率が高い処方のみ、
吐き気の副作用があり

ニコチン系はタバコ以外でニコチンを摂取し続ける方法です。一方で、バレニクリンは​​ニコチンの受容体に結びつくことで、ニコチンのような効果を軽く模倣し、禁煙時のニコチン欠乏症状や喫煙欲求を減らすのを助けるため、後者の方が理想的な治療といえます。
また、当クリニックではご希望の患者様には禁煙補助アプリ(CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ)を用いてさらなる成功率アップを支援させていただきます。アプリを併用することで、開始から9~52週における継続禁煙率が高い結果となっており、期待が持てます。

受診の頻度と継続率

全部で5回の受診が必要となります。最後まで治療できた場合、その後の禁煙継続率は非常に高いのですが、一方で途中でドロップアウト(諦めて)してしまうと禁煙継続率はガクンと下がってしまいます。5回目までしっかりと続けていただくことが今後の成功のカギとなります。

1回目:診療 2回目:2週間後 3回目:4週間後 4回目:8週間後 5回目:12週間後 ※厚生労働省e-ヘルスネットより参照

オンライン診療のご案内

当クリニックではオンライン診療も行っております。対面診療の方が一酸化炭素測定や身体診察など、さらに有用な所見を得られるためできる限り推奨しておりますが、禁煙診療は初回から5回目までオンライン診療で行うことが可能です。
身体診察や血液検査などを必要としない場合、オンラインでの診察は非常に便利です。お薬もオンラインで服薬指導を行い、自宅に届くシステムとなっているため、受診をするお時間がない患者様にはぜひオンラインでの診療をお勧めしています。

禁煙しつづけることが大事

禁煙外来としては5回で終了となりますが、禁煙は維持が大事です。さまざまな形で当クリニックに来院していただけるような取り組みをして参りますので、定期的にぜひ経過を伺えれば幸いです。

禁煙に成功し、維持し続ける自信をつけるには?

以下の5つのポイントがあります。

全て捨てる

まずは自宅や職場などにあるライターや残りのタバコ、吸入デバイスなどを全て捨てましょう。「もったいない」と思ってはいけません。タバコを買わなくなればすぐに取り返せるほどの金額です。

自分のクセを知っておく

飲酒時、起床後、コーヒーを飲む時、食後などルーティン化しているタイミングがあると思います。まずそのルーティンを撤廃しましょう。

  • 喫煙可能な喫茶店から、喫煙不可能な喫茶店に行きつけを変更する
  • 飲酒前に灰皿を片付けてもらう など
禁煙成功の仲間をつくる

皆さまも「タバコミュニティ」があるのではないでしょうか?
まずタバコミュニティから卒業することが大事です。しかし誘われるとなかなか言い出せず、ましてや先輩や上司に誘われた日には逃げられない可能性もあります。そのため、タバコミュニティから一緒に離脱してくれる仲間をつくりましょう。

ご家族やお子様、友人に報告する

周囲に宣言することで成功率が高まります。褒められることもあれば、コンビニのレジでタバコを眺めているだけで注意してくれることもあるでしょう。周囲に優しく監視してもらうことはとても有効です。

効果を実感しつづける
禁煙してから効果
20分後血圧や脈拍が正常に近づく
24時間後心筋梗塞のリスクが下がり始める
48時間後嗅覚や味覚が喫煙していない頃のように改善してくる
2~3日後体内のニコチンがなくなる。
離脱症状に注意すべきタイミング!
2~3週間後顔色が良くなってくる
1~9ヶ月後咳や痰が改善してくる
1年後心筋梗塞のリスクが半分になる
5年後脳卒中リスクが非喫煙者と同等になる
10年後肺がんによる死亡リスクが半減する
15年後心筋梗塞のリスクが非喫煙者と同等になる

費用について

保険診療の適用について

保険診療は現在バレニクリン(チャンピックス)という禁煙補助薬の生産が止まっている関係で、貼付薬(パッチ)のみの治療となります。内服治療をご希望の方は輸入薬による自由診療をお勧めしております。

輸入薬は国内未承認の医薬品です。万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。

保険が適用される方とは

以下の基準を満たす必要があります。

また35歳以上の場合、上記に加えて

  • ブリンクマン指数が200以上

が必須条件です。
ブリンクマン指数 = 1日の本数 × 喫煙年数

保険適用時の費用

3割の自己負担比率の場合、12週間で約2万円の自己負担額になります。

治療費助成金について

禁煙外来を受診し、禁煙に成功した人に対して、禁煙外来費用の補助を行う健康保険組合もございます。詳細はご加入いただいている保険組合へご確認してみてください。

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